その島で私達は暮らしている。

兄弟のようであってそうではなく、だからといって他人でもない私達12人。

そう。私たち12人はお父さまに「造られた」娘…。
15年前、最愛の一人娘を病気で失ったお父さまは、悲しみのあまりテクノロジーのタブーを犯した。

“クロップド・ヒューマン”と呼ばれる娘のクローンを造り出したのだ。

それが私たち12人の娘。
オリジナルの娘、ゆかりは、不治の病にかかり、病院で寝たきりの生活を送っていたらしい。

見舞いに訪れたお父さまに「病気が治ったら」という仮定でいろんな夢を語ることが彼女の気晴らしと生きる原動力だった。

しかし彼女は力尽きて死んだ。

果たされぬ夢を叶えるため、お父さまは私たちを造った。

娘が健やかに成長していたらありえたかもしれない、もうひとつの可能性としての私たち。
私たち12人はカレンダーのように月の名前を与えられ、まったく別人格をもった人間として育てられた。

厳密にいうと、私たちは完全に同一人物という訳ではない。

遺伝子操作で髪や眼の色は異なっているし、それぞれの夢の領分に合わせて、強化がほどこされているのだ。

他の11人を見ても、鏡を見ているような気になるのではなく、血のつながった肉親を見ているような、そういう錯覚を覚える。

 世間の糾弾を恐れたお父さまは、少数の使用人と私たちだけを連れ、南海の孤島に隠棲した。
私たちはそれぞれの分野で最高の個人教師をつけてもらい、何不自由なく育った。ときどき外の世界を見てみたい欲求に駆られるけど、騒ぎになるのを恐れて我慢した。

それに大好きなお父さまも必ず月に一度、私達のいるこの島へ顔を見せて下さるのだから寂しくはなかった。

穏やかな朝、細波の心地いい音とやさしい潮風に耳をくすぐられ私は目を覚ます。

私の名は杪秋(さき)。九月にちなんでそう名づけられた。
外から元気な花月(かつき)と三至(みこと)のはしゃぐ声が聞こえてくる。

山林の岩の狭間でチェロを奏でているのはきっと林鐘(りんか)だろう。
そんな和やかないつもの日常にも私の心はなぜか晴れない。

昨夜、(新月)しづきが星を見上げながら語った不吉な私達の未来…それは彼女が専門分野としている占星術の結果に過ぎないのだが彼女の占いは単なる統計学では片付けられないなにか予見じみた神秘性を私は常日頃から感じていた。

適性にかなった能力の開花。しずきは私達よりも一歩先を歩いている気がした。

その彼女はこう告げたのだ。「私達の未来を暗く覆う悪意がもうそこまで迫ってきている」と。

 林鐘のチェロの音が突然止んだ。

代わって次第に大きく近くなる人口の機械音。けたたましいヘリの騒音が耳をつんざく。

お父様が来られる日はまだ少し先のはず。わたしは胸騒ぎを覚えたがすぐにそれはショックな現実として突き付けられた。


 


 

  
 


本編のヒロイン。
おっちょこちょいのムードメーカー
苛烈なサバイバルで急成長を遂げる…予定



12人の娘達に“お父さま”と“おかえりなさいませ”を躾けたアキバ系エロ親父…!?


占いと幻術の研究者
12人の中で最も能力開花の早い優等生だがその言動は限りなくネガティブ。



外見が幼く12人の中でマスコット的存在。
ある意味、最も家庭的な少女
日本舞踊を修学中


大人しく、影が薄い印象を与えるのは行動に自主性がないから…?
物理学が専門分野


モデル並みのプロポーション
観月と同様に体育会系思想で努力と調和を重んじるが…


自然を愛するナチュラリスト
天文学が専門分野


音楽の天才少女
12人を代表する存在で“お父様の夢”に最も近い完璧優等生。


研究、分析オタク。心理学が専門分野の言葉責めが得意そうなインテリ少女(笑)

  



12人の中でも特に身体能力が秀でておりスポーツ万能。
すぐに人を信用する迂闊さがネック。腕力だけならメンバー中最強の存在。


色気ムンムン。
怪しい大人のオーラを放つが武器はその肉体ではなく実は明晰な頭脳。


紗秋の親友
直情的な面もあるが実際は思慮深くやさしい少女
仲春の毒殺疑惑を晴らせぬまま…


12人の中でお姉さん的存在のリーダー。
あまりに重いその“12月の記憶”に悩まされつつ気丈にふるまう
専門分野は考古学
   
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